NANAKOの海外移住日記

変化を好み、移住をくりかえすマルチリンガルです。母国日本も大好き。現在は台湾。

語学最初の一歩 ~初めて知り合った中国人~

今からもう15年ぐらい前の、初めて知り合った中国人の話。といってもネット上のみで会ったことはなく、もちろん顔も見たことがないので友達というのもおかしいし、かといってただの知り合いというほど適当な感じでもなかった。

熱心なプライベート中国語の先生って感じかな。

私にとって初めて知り合った中国人だったから、以後数年間私の中の中国人像はあの人が大きく影響していた。

当時私は中国語を勉強する!と決心したばかりで、でも中国語習得するにあたってお金を払って学ぶ気はさらさらなくて、手軽な方法としてさっそくネットの掲示板を使って日本語を勉強している中国人を探した。自分が書き込んで募ったのか相手の書き込みを見て自分から連絡をとったのかはもう覚えていない。

とにかく私は「一天」と名乗る一人の中国人とスカイプで通じることに成功した。

 一天さんは河南省出身の(当時)26歳の方だった。日本語を勉強したくて相手を探していると私にたどり着いたようだ。とても熱意があり、絶対に日本語を習得したいのだという気持ちが伝わってきたのはいいが、私たちにはひとつ大きな問題があった。絶望的に意思疎通ができなかったことだ。

向こうは日本語がほとんどできず、私は中国語が全くできず、英語はどちらもさらにできずだった。

意思疎通で悶々とするなど初めての経験だった私は結果、早く中国語を習得したいというモチベーションにつながった。相手の意図が理解できないというのは本当に後味が悪く、ストレスがたまるものだ。

私は最初一天さんの書く中国語を、漢字を見てだいたい見当をつけることと当時まだ恐ろしく進化していなかった翻訳機を使い、苦労してやっと半分理解していた。

 

一天さんはいつも約束の時間を厳守してスカイプにやってきた。仕事後の夜に毎日やってきては数時間スカイプをしていた(私はフリーターで暇だった)。

中国人は生真面目で責任感が強い。それが私の第一印象。

何をそんなに毎日数時間もしていたかというと、発音の練習だ。理由は簡単で、意思疎通ができなさすぎて発音の練習しか選択肢がなかったから。

日本語の発音は一天さんが日本語の教科書を持っていたので、練習したい文章を打ってもらいそれを私が発音して一天さんが繰り返す・・・という流れだった。中国人・・というか全世界の人々はは日本語の発音が上手い。日本語の発音はほとんどが口先だけでできてしまうから。

一天さんもちょっとアクセントはあるものの、ほぼほぼ問題なく発音できた。そんなに手間もかからなかったし、真似するだけなら複雑な文章でも難なく発音できた。

問題は私の中国語だ。

私の中国語発音練習は、一天さんの日本語発音練習に比べて数十倍の時間がかかった。よくあんなに我慢強くつきあってくれたものだと今でも思う。しかも明らかに自分の時間を損しているのに!

まず一天さんが中国語の文章とピンインを打ち、発音する。それを私が真似する→できない→一天さんが私のできなかった発音を取り上げる→できない→繰り返す→できない×10 ぐらいで一天さんがウーン?と考え出す。でも一天さんは私がなぜできないのかわからない。こんな簡単なのになぜ?とでも言いたげに発音を確認する。結局何度も何度も、何時間も同じ発音をして私に聞かせるしかない。

一天さんは本当に根気強かった。私がどうしてもできなくて「もー無理やし」「無理無理」「もう嫌、やめよ」と心の中で毒を吐いていても続けられた。毎日何時間もそれが続いたのだ。

「もういいよ」と言いたかったけど中国語でどういえばいいのか分からないから、私もやるしかなかった。いや、何回かは根を上げて「もー寝る」と言った記憶がある。一天さんはあっさりとOKといい明日の時間を決め、それ以上は押し付けてこなかった。

ただただ真面目な人だっただけだ。

あまりにも毎晩毎晩パソコンの前に座って変な声を出しているもんだから、時々夜中の3時頃に父や母が起きてきた。「ごめん、うるさかった!?」というと「うるさくないうるさくない、続けて」と言ってくれたが、ホントは眠れなかったからこそたまらず起きてきたんだろう。でも何かを習得しようとしてるのだと知って我慢してくれたんだと思う。ありがたい。

私は必死で一天さんの声を聴きながらああでもない、こうでもないと周りのことも考えず、延々に喉から奇声を発していました。すみません。

 

一方であまりにも自分の発音ばかりに時間をとられてしまい、一天さんの日本語が上手くならないと思った私は

同じ本があれば一緒に見ながら教え合えるんじゃないか?

と思って一天さんに小さな中国語と日本語が両方書いてある辞書のような単語帳を送ることにした。当時のネットの中にはそういうものも充実していなかったから、住所を教えてもらって郵送した。手紙は一天さんが勉強できるように簡単な日本語で書いた。

これで単語を一緒に勉強して文とかつくって・・・というまに私が台湾に留学することになった。

当時まだノートパソコンは高すぎて手が出なかったから私は台湾でネットが使えず、一天さんとは一緒に勉強することができなくなってしまった。

 

しかし一天さんの3か月に及んだ執拗な発音特訓のおかげで、(完璧に真似れるまではいかなかったものの)私の耳にはずっと聴いていた母国語者の正しい発音が残っており、その発音は私が台湾で中国語を勉強するにあたって絶大な効果を生み出してくれた。

私は台湾に行く前に中国語の文法を一度も勉強したことがなかった。ただ発音練習の繰り返しで覚えたいくつかの文章があっただけだ。

しかしレベル分けテストでは初級の2に入り、さらにその中でもリスニングが余裕だった。文法や読解が得意でリスニングと発音が苦手な大半の日本人とは全く違うタイプだった。ネイティブスピーカーの発音を嫌というほど聴いていたからか先生の言うことがスーッと耳に入ってくるのだ。

この経験は私が語学を学ぶことの楽しさを教えてくれた。のちに5か国語習得するモチベーションになったことも間違いない。発音は今でも変わらず私の財産であり、言語習得にあたっての大きな自信につながっている。

初級2の日本人の中には1年間日本の中国語教室で習った人もいて驚いた。授業はすべて中国語で行われるのだから、1年習ってこのレベルの人も多いのだ。私が知らず知らずのうちに生産性の高い勉強をしていたのだと知ったのは周りの人の勉強法を知ってからだった。一円も払ってないけどね!

もちろん一天さんが生産性の高い勉強法や発音の重要性を知っていたのではなく、成り行きと真面目な性格が結果、私に発音の重要性を気づかせてくれたのだけれども。

外国語習得の生産性は、発音の出来が左右します。よかったら参考にしてね。またいつか詳しく書きます。

ホントに5か国語を習得した今になって、偶然一天さんに私の第一外国語の発音を教えてもらえたことが私にとってどれだけ幸運だったかということに気づいたのです。最初ってホント大事。

 

 

很感謝住在河南省的許鄭輝老師!