NANAKOの海外移住日記

変化を好み移住をくりかえす5か国語話者です。母国日本も大好き。現在は台湾。

〇か国語を習得した!主張は十中八九虚構だよ

日本に一時帰国中、よく書店に行っています。

よく目につくのが

「〇か国語を習得する方法」とか「〇十か国語を3か月で勉強するための・・」みたいな題名の本です。

語学に興味を持ち始めた20歳前後のころ、私もそそられて何冊か買いました。確か私が買った中の1冊は「40か国語習得法ー私はこうやってマスターした」という本です。買ってすぐ疑問に思ったことがありました。

・・・著者の外国語レベルが具体的に書かれていないのはなぜ?

確かに本の中には「私は40か国語ができます」みたいなことが書いてあるんです。どうやって習得したかも書いてあります。てかそれをメインに書いている本です。

でもそれってどんなレベルで?

会話?リスニング?筆記?読解?どの部分をどのぐらいのレベルでできるのか、という(私が一番知りたい部分である)筆者の細かい記録が全く書いていないのです。

会話1つでもカタコトの自己紹介から旅行でよく使う会話、日常会話、ビジネス会話、専門的な会話、通訳などいろいろなレベルがあります。

著者たちはいったいどこのレベルを「できる」または「習得」してるの?そういう記載がどの本にも一切書かれていません。

40か国習得と書くなら40か国語をどのレベルでできるのか、なんの証明もされていません。

10か国なら10か国語をどのぐらいできるのか、主観的にさえ説明すらされていません。

たとえばユーチューブなどで会話や通訳をしているところを実際見せるのは非常に効果的ですよね。会話やリスニングのレベルはすぐにわかるので一番信頼性が高い。私が自分のマルチリンガル能力を売りたくなったら真っ先にそうします。

こんな論文を書いた、〇〇語で本を出した、留学歴などの実績があればそれも書いたらいい。

しかし私が20歳のころに買ったマルチリンガル系の本も、現在本屋で見かけた本も、自己評価で「習得した」としか書いていない。

 

なぜか?

 

それは、著者の「外国語を習得した」レベルが非常に低いからです。

私が想像するに、複数の外国語の会話ができる、と主張して本まで書いちゃってる人の多くはせいぜい旅行会話ぐらいじゃないでしょうか。しかも一方的にお決まり文句を言える程度で、リスニングはもっと劣るのかもしれない。

それに外国語は習得すれば安泰、ではありません。坂道を上るのと同じで、使わなければ落ちていきます。いくら凄い人でも10か国語すべてを「法廷通訳レベルでできる」人なんてどこにもいません。

さらに語学は会話だけじゃありません。読解に至っても、文字が読めるとかいう程度である可能性が非常に高い。10か国語で論文が読めるのは一流の研究者ぐらいです。研究者は読めるだけでは「できる」とは表現しないですが。

 

なにがいいたいのかというと、数か月で何か国語が話せるとかいうのを真に受けないこと。そんなことを主張できる人は「やってない人」か「”できる”のレベルが低い人」です。語学をなめちゃいけません。語学はたった一言語勉強するだけでもとっても深く、文化的背景の知識やセンス、また相当な時間が必要な難しいものなんです。

語学の本には、「すぐに簡単に習得できる!」とうたった本が大半ですが、逆に「語学は相当根性いりますよ」と主張した本のほうがちゃんと習得法の研究してるとさえ感じるほどです。

ではなぜこのような本や教材が出回るのか?

多くの日本人が語学に対して無知すぎるからです。

 

それでは「話せる」と主張する、そしてそれに感激する日本人のレベルが一体どのぐらいのものか、実際検証してみましょう。

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たとえばこの動画。

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テレビに出るぐらいの語学の天才だそうです。しかも若い!この方の語学力をみなさん、どう思いますか?

 

私の感想を言いますとこの方のすごさは、なんといっても話すスピードです。スピードにより難しい発音もうまくごまかせるし、しかもペラペラに聴こえます。舌がよく動いているのは相当話すトレーニングをしたのだと思います。本当に尊敬します。

おそらくひたすら高速のリスニングをして耳を慣らし、会話を繰り返し聞いて復唱し、イントネーションに慣れ、丸暗記するというやり方で学んでいる印象を受けます。それを10か国しているのだから、すばらしい忍耐力だと思う。

 

・・・では話す内容は?

「旅行ですか?」

「何日間ですか?」

「どうでしたか?」

明らかに観光地でインタビューした感じですね。
ヨーロッパ人に対してはほとんどこんな感じで、予想外の答え(相手がいいえと答えた場合)がきたときには、相手の答えを繰り返し、会話の中にうまく織り交ぜています。

この方のヨーロッパ言語の能力は、数字を聴きとる能力と簡単な基礎旅行会話。これしか見えてきません。これは初級1のレベルです。上級レベルの発音とスピードで初級1レベルの会話をネイティブスピーカーとしているといえます。

中国語と韓国語は日本人には習得しやすい言語です。この方もそうだったのでしょう。ヨーロッパの言語よりは少しバラエティ豊富な感じ。簡単な応用もところどころできている。特に韓国語は初級2ぐらいかもしれません(しかし文の作り方は中級ではない)。

そしてインドネシア語。これは1日2日で覚えたものでしょう。インドネシア語の文法は初級をする分にはかなり単純で、発音もそのまま、しかも表記はアルファベットです。まだほとんど会話のできないレベルだと思います。

アラビア語の「住む」や「愛する(好き)」という単語は最初にならう動詞です。さらに質問に対し、「日本は第二の故郷」と答えた相手に対し、この日本人は答えを2度、繰り返しています。そして「二」という数字は理解できた様子。しかし「故郷」が理解できたかは怪しいです。番組内では少なくとも訳してはいません。

揚げ足とりのような事ばっか言ってますが、この方の会話スピードはネイティブ並みですが、ほとんどの言語で使っている文法は初級1レベル、そして多く見積もっても旅行会話レベルといえます。

もうひとつ大事なのはこの方の英語を使った会話。英語では他の言語と同じ内容をたずねながらも、少し複雑なことを自発的に、難なく表現できています。東大生なので英語の知識は相当持っているはず。

しかし、もし他の言語も英語のようなレベルで話せるなら、どの言語でもあれぐらい自発的に、もっとバラエティ豊富な表現をするはずです。しかもテレビに自分の語学力を見せるために話しているのだから。それが英語にしかない。なぜか?それは英語しかできないからなんです。

とはいえ、短時間で10種類の言語を(簡単な表現であれ)混乱なく次々と使えるのはなかなかできないことです。頭の回転が非常に速い方であることは間違いありません。

その上、「ペラペラに聞こえるように話す方法」を研究し、練習し、実行しているといえます。

 

だいたい会話というものは、初対面の人に質問するのが一番簡単なのです。なぜなら初対面の人といきなり政治についての議論なんてしませんよね、ドイツ人でもない限り。まずは相手について尋ねるのが一般的。初級で習う会話そのものです。

しかし初対面の外国人と、20分しゃべりつづけるのはあまり容易ではありません。日常会話程度の会話力、リスニング力は必須です。

この動画がもし、この日本人が自由に「質問される」側、もしくは一つのテーマについて議論する方式だとしたら。どの言語をどこまで理解でき、話せたかはひじょーに疑問ですよ。

 

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逆にこの方。

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外国語大好きおじさん。

この方は、ご自身のことを「ポリグロット」と表現しています。直訳は「多くの舌」ですが、つまりたくさんの言語の「話す」ところに特化しているということです。

幼少期からのバイリンガルやマルチリンガルによくいますね。

自己紹介 - 詳細表示 - シンガポールより! 外国語大好きおじさんのブログ - Yahoo!ブログ

外国語大好きおじさんのブログにも語学の実績が詳細に記されています。

ユーチューブでも英語、中国語、広東語などを流暢に話しており、母国語者から絶賛のコメントが多数届いています。

確実に相当レベルのポリグロットの方です。ブログを読んでも勉強法などを非常に細かく記されています。しかも長年こつこつと。この方は留学もしているし、上海やシンガポールでも長年お仕事をされているそうです。自身の勉強に加え、生活や仕事に英語中国語を毎日使っているのでしょう。そらあ上手くなります。

こんな実績のある方でもご自身を「マルチリンガル」と表現せずに「ポリグロット」と表現するのは、書いたり読んだりするレベルは話すことに比べれば劣るよ、話す練習を中心にしたのだという姿勢を表していますよね。この方のように、語学はどこまでも謙虚になる必要がある、とても奥深いものなのです。

大人になってからポリグロットやマルチリンガルを目指そうと思ったら、方法はなんであれ長年こつこつと単語を覚える作業を繰り返し、慣れ、現地などで実践を重ねるしかないのです。

 

以上のことから結論。

数か月でウン十か国語を習得したという本の著者は、一体何を習得したと言ってるのか?

それはたった初級レベルの会話か、文字の読み方ぐらいでしょう。きっと説明しているのは文法や単語の共通性などを説いたものだと思います。初級レベルの会話を「習得した」と、本を出してその習得法まで提示してしまうのは少し傲慢に思えるのは私だけでしょうか。それじゃ現地の人との会話すら怪しいよ。

人間の中にはサヴァン症候群のように本当に”天才レベル”の並外れた記憶力を持つ人や、一度聴いたことを忘れないといった語学習得に適した人もいます。しかしそんな人は本など出しません。だって誰にも真似できないのだから。

語学の習得法には個々の適性があります。

例えば単語の覚え方ひとつとっても、ひたすら書く人、物語の中に出てきた理解できない単語をチェックして調べる人、聴いて覚える人、繰り返し発音する人、などさまざまです。

そのさまざまな習得法を本から学び、自分に合ったものを見つけるのはとても理にかなっています。

しかしどの習得法にも近道はありません。

ぜひ、本やインターネットに出回っているような安易な”私はマルチリンガル”と主張して教材を売るような人は信用しないように。本当にもったいないです。

 無料で読める、実績もある外国語大好きおじさんのブログから学ぶのはおすすめです!

 

それでは!