NANAKOの海外移住日記

変化を好み移住をくりかえす5か国語話者です。母国日本も大好き。現在は台湾。

私の体罰体験

日馬富士の引退から垣間見えたスポーツ界のパワハラ問題。その後出てきたレスリングの栄和人元監督のパワハラ、そしてつい最近起きた警察官射殺事件。思うことがいくつかあるので、まずそれにつながる体験:私が高校で受けた体罰について書いてみます。

私は高校までは日本で卒業しました。いわゆるスポーツの実技で高校に入りました。体育科の高校なのですが、部活をやめたら退学というスポーツ推薦特有の条件が同じです。

私が入っていた女子バスケットボール部の顧問の先生は、日常的に手を出す人でした。生徒のプレーについて気に入らないことがあるとペナルティを課すことが日常で、へとへとになるまで走らされたり殴られたりしました。

”何も考えるな、言われたとおりに全力でやれ!”とか”アホになれ!”と日常的に生徒に擦り込み、負けると”俺の指導力がないせいや”とわざと言って生徒に”いいえ!”と罪の意識を植え付けたり、体力をギリギリまで使わせて思考能力を奪いました。

また練習後などに長話をしては、”いかにみんなで勝つことに意義があるか”というような美しい(?)説得も織り交ぜました。マインドコントロールという言葉も知っていたのでしょう。

このようにほとんどムチ、たまに飴を与えるやり方はDV+モラハラの傾向です。この人の支配的傾向はコートの中では顧問の発言に対して「はい」OR「いいえ」OR「わかります」の3語しか発してはいけなかったという暗黙の了解からも伝わるでしょう。

 

高校のスポーツの顧問がやりすぎた例があります。2012年12月に起きた大阪市立桜宮高校の男子バスケットボール部キャプテンが自殺した事件。個人的にとても見過ごせなかった事件でした。当時顧問だった小林基被告は日常的に生徒たちに暴行をしていたとのこと。自殺した生徒は前日も30~40発殴られていたそうです。

当時の先輩は、小林被告は殴ることが習慣化しやめられなくなっていたと証言しています。私の顧問にいたってはここまで毎日毎日殴っていたわけではありません。誰も殴らない日もたくさんあったし、顧問の主観ではありますが一応「殴られる原因」がありました。たとえばロングシュート成功率を買われて試合に出てるのにノーマークのロングシュートをエアーボールで外したからとか。小林被告のように、怪我した生徒の救助の際、運び方が悪かったと殴るなど「殴るための口実」をつけて暴行するまではいってませんでした。が、小林被告の予備軍であったことは間違いありません。

私が卒業して約10年後にこの自殺事件が起きたとき真っ先に、過去の体罰被害者たちが、全国各地に存在するであろう大量の小林被告を一人でも止めるチャンスがなかったんだろうか?なぜ誰も何もしなかった?という後悔を感じました。今さら何言ってもあとの祭りですが。昔から今の今でも、何万人の生徒が似たような顧問の下で同じような環境におかれているでしょう。

当時、幾度となく行った練習試合の場でも殴られている他の学校の生徒を何度も目撃しました。殴っている顧問は皆、確信犯です。悪いのわかってて、バレたらやばいのを十分にわかっててそれでもやってます。顧問同士もそれを目撃し確認し、みんなやってるから俺間違ってない、とか思っていた可能性が高い。典型的日本人思考だね。

でも残念ながら、私たちが殴られた相手にたいし何かできたか?というその答えは、ない。無理。なぜか?原因は立場の違いとか推薦組のやめられない事情とか色々あります。私がここで取り上げたい大きな原因は、顧問に殴られていた元生徒の多くが、いつまでたっても体罰の被害者であると気づかないこと。

外から見ればこんなにわかりやすい被害ないやん?と思いませんか?大人が、しかも他人が権力を駆使して高校生をビンタしたり好き放題するんですよ。時には怪我や上記の例では自殺までさせるんですよ。うちの顧問も遊びにきた卒業生を指して「あいつは昔俺に顔変わるほど殴られた」とかって自慢するんですよ。明らかにアウトじゃない?

でもなんで殴られた当事者がその被害に気づかないの?顔変わるほど殴られたのになんでまた加害者に会いに来てるの?ドМなの?と皮肉のひとつもいいたくなります。
その理由を私なりに体験から導き出してみます。



・殴られる方がまし

実は私自身が引退するまで一貫してそう思っていました。いやいやそれ体罰でしょ?殴られたいわけ?と疑問に思う?んなわけないやん。殴られるよりさらにつらいことがあったからです。それは走らされたり、体力的なペナルティを受けること。

フラフラなのにやめられない。倒れそうなのに走り続けるしかない体力的な辛さに比べれば、私にとってはめっちゃ痛いがあまり長引かない暴力行為のほうが全然ましでした。これは本心です。自分の身体を守る本能だったと思っています。

特に女性は子供を守るために100%体力を使い切らないよう制御する本能があるといいます。女性のこの部分を顧問は非常に嫌っていました。「男はな、100%の力をそのまま出してパタッと倒れることができるんや。でも女はできひん。でもおまえらは男になれ!100%やれ!」とちんぷんかんぷんなことをよく言っていました。無意味な体力的ペナルティを多く課すのもこの部分から来ていたのでしょう。

別の視点から見ると、私はすでに殴られることに慣れていたといもいえます(私は顧問以外に殴られた経験はありません)。普通なら高校生の女の子が体格的にも及ばない大人の男性から力の限りビンタされるってけっこう怖いはずだから。恐怖心がすでになかったからこそ体力面を心配したという心理だったと思います。自分のプレーが悪くて明らかにこれはペナルティが来る、と知りながら顧問のもとに戻る時「お願い、殴るほうにして。」と心の中で手を合わせていました。

こんなことを感じさせられていた当時の私が、どのようにして自分は体罰の被害者なのだ!と気づけたでしょう。むりだ。余裕なさすぎ。

・先輩から”殴られること”を肯定されていた

入学したときから先輩たちは口をそろえて「今年の1年で一番さいしょに殴られるのは誰かな~♪」とにこにこしながら話していました。その背景には”楽しみ”というニュアンスも見え隠れしました。今思えば信じられない。でも私の場合は中学のころあこがれていた先輩たちと同じ場でプレーがしたくてこの高校に入ったので、いわば先輩の信者であり、影響力が特に大きかった。これは他の生徒と大きく違うことだったかもしれません。
殴られる覚悟を常にしておくように、とも言われました。殴られて身体がよろけても先輩たちに顧問のほうへ押し戻された。暴力に協力する先輩たちの姿を見て顧問は洗脳完璧!と感じていたに違いない。

さらに先輩の中には、ビンタの際に耳の鼓膜が破れた経験がある人もいた。これは顧問が自宅まで両親にあやまりに行ったそうです(それ以後も別の子の耳の鼓膜破ってたけどね)。この行動も小林被告と被ります。自殺2週間後に生徒宅を訪れ、顧問復帰をお願いしたという信じられないやつ。間接的に殺しておきながら「みんなやってるのに俺だけ貧乏くじ引くなんて納得いかない」的な主張ですよね。

私の顧問も怪我をさせたあとで自宅を訪ねる行為までしているものの、なんのために行ったんだろ?またやってるのに?自己保身以外にもっと先に考えることないのか?まじで体罰をする顧問は共通点だらけ。
でもね、鼓膜を破られても、その後また殴られても、その先輩は変わらず顧問に絶対服従してるんです。そんな先輩から学ぶ後輩はさて、どうなる?火を見るより明らかだ。

・顧問自身も体罰の肯定を繰り返す

ある時、有名な元バレーボール日本代表選手が高校に講演しにきてくれました。この方は素晴らしい講演をし、体罰がいかに間違っているかを自身の経験を交えてわかりやすく伝えてくれました。

私たちに向けて語ってくれるその内容は、明らかに教師陣の体罰が横行していることを知っての彼らにたいする意識改革が目的でした。私は感激し、これで自分たちの顧問も少しは変わるんじゃないかと淡い期待を持ちました。体罰被害者の実体験からくる説得力のある講演だったからです。

しかしこの日の部活動は顧問は機嫌が悪く、何度も中断して長い話を繰り返しました。
「あいつはあんなん言うてるけどな、俺は殴る。俺は俺のやり方でやるんや」と自分に言い聞かせるような。顧問の言い分は「追い詰められた精神状態の中でやらんかったら、厳しい試合で追い詰められたときにどーやって勝つんや」でした。そりゃ必死に説得しなきゃね、自分が長い時間をかけて築き上げてきた私たちへの洗脳を解かれては困りますもん。

ああ・・書いてるだけでもあほらし。ちなみに講演された元バレーボール選手は次の年から一切来なくなりました。

・体罰経験は武勇伝

どれぐらいひどい体罰を受けたか、誰が一番よく殴られたか、などの武勇伝。何年たっても女子会とかで集まって嬉しそうに体罰体験を語る元同級生を見ると、ああ、あの頃のままでなんにも変わってないんだ・・・と遠い目になってしまいます。
ちなみによく殴られる子=下手な子ではありません。よく殴られるのは試合に出ている子です。つまりそれなりに鍵になる選手。だから殴られる=期待されている、と皆が主張します。これも先輩から刷り込まれました。

「先生に殴られなくなったら終わり」とは一番怖い脅し文句です。殴られてありがたく思えというびっくりな発想。暴力的な顧問がいるチームではどこでも間違いなくそう主張する。これなしに暴力を正当化できない。だから殴られるたびに言われました。いろんなチームメイトから。ってかなーんでこんな主張がまかり通るのだ!!おかしいでしょ!

しかしこれはある意味正しいんです。実際に稀にいる全く殴られない子って3年間ベンチにも入らないような最初から戦力外の子です。それはあたりまえ。だって殴る理由がないじゃん。殴られない=期待されていないは当たり前で間違いではない。だから体罰を受けたという被害体験は試合によく出ていたというポジティブな武勇伝にもなれる。これは本当に怖い。歪みすぎ。
でもちょっと考えればわかるでしょう。だって殴られる行為の本質は、自分のプレーがどうだったのかではなく、顧問が問題なのだから。そこ気づかずに肯定し、または加担する体罰被害者がまじで多すぎ。

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とはいえ私も高校時代には「なんか変じゃないか・・」とうすうす感じてはいたもののその原因にははっきりと気づかず。海外に出てから自分の高校時代の異様さをありありと実感しました。日本の視野の狭さだと気付く人が少ないのも無理もないのかもしれない。
実際、数年前に行われた顧問の定年退職パーティー的なものにはたくさんの教え子が企画して駆けつけ、豪華なホテルで大々的に行われたようです。私の同期も13人中10人が出席。かつての顧問を祝うために。この参加率が全てを物語っている気がします。
私は海外にいて物理的にも行けなかったけど、行けても間違いなく不参加でした。

 桜宮高校のOBの方が書かれたというこの記事の意見にわたしは、全面的に同意です。本当にこのとおり。

桜宮高校の体罰について2016年になったので当時の在校生が説明してみる。 | タニえるブログ

この中にある「卒業生の怖さ」という部分で、自殺のあとにOBたちが、”生活に困る先生を助けよう!”と立ち上がったと書いてあります。え?生活?先生?これには私も絶句。
自殺した子が悪いみたいなニュアンス?人間ってここまで思考停止になれるのか。

悲しくなってきたのでもうやめます。

最後に一言。どうすれば暴力を行う教師から抜け出せるか。高校生のように外の経験がない状態では本当に難しい。難しいのはわかっている。けどあえて、これしかない。それはおかしさに気づくこと、気づけるぐらいに賢くなることです。
暴力教師は頭の回る子に非常に敏感です。すでに色々気づいている子は慎重に扱います。あと、殴られて怪我をしたとかビンタの痕がほっぺたに残っている、など目に見える場合は必ず写メ撮っておきましょう。見せなくても、証拠を残しておくだけでも相当強いから。おかしさに気づけばできる簡単な、自分や同級生を守るための保険行為です。

 

下次見!